宮島達男 × 田根剛と建設予定地をめぐり、「コラボレーション・アーティスト」として名を刻む1日|福島県(富岡町)特別プログラム レポート

宮島達男 × 田根剛と建設予定地をめぐり、「コラボレーション・アーティスト」として名を刻む1日|福島県(富岡町)特別プログラム レポート

「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」というコンセプトに基づき、東日本大震災をきっかけにアーティストである宮島達男が、震災の犠牲者の鎮魂と震災の記憶の継承、そして、これからの東北の未来を東北に生きる人々、東北に想いを寄せる人々と協働しつくる「時の海 - 東北」プロジェクト。2015年に構想をスタートし、3,000名近くの人々との対話を重ねながら、作品を生み出してきました。 2025年8月6日に、福島県富岡町で【宮島達男 × 田根剛と建設予定地をめぐり、「コラボレーション・アーティスト」として名を刻む1日】と題し、特別プログラムを行いました。本記事では、特別プログラム当日の様子をお届けします。
文・写真=西塚笑子(「時の海 - 東北」プロジェクトスタッフ)

《時の海 - 東北》美術館(仮称)予定地へ

今回の特別プログラムには、福島県内だけでなく全国各地からたくさんの方々にご参加いただきました。
当日は、照りつける夏の日差しが和らぐ曇り空の下、海からの風が吹く気持ち良い気候で、メディア関係者のみなさまにも集まっていただき、和気藹々とした雰囲気でプログラムはスタート。

まず、はじめに《時の海 - 東北》美術館(仮称)の予定地(以下、美術館予定地)に向かいました。

現代美術家・宮島達男(右)、建築家・田根剛(中央)、「時の海 - 東北」プロジェクトディレクター・嘉原妙(左)よりご挨拶と、美術館予定地の紹介。

当日の美術館予定地からの、海の風景。

建築家・田根剛さんからは、美術館建築の現状のプランについてご説明いただきました。さらに、この場所を初めて訪れたときの印象や、美術館から望む海の景色との出会いについても語ってくださいました。

美術館予定地の建築について話す田根剛さん。

田根さんのお話に、熱心に耳を傾ける参加者。

その後、建設予定地を自由に散策いただきました。参加者からは「とても素敵な海の景色が広がっているね」と、海の景色についての声や「この場所は元々どんな場所だったのだろう」など、美術館予定地周辺がどのような場所なのかについての声がありました。

美術館予定地からの海を見つめる参加者。

田根さんから直接お話しを伺う方も。

富岡町の新しい風景、「とみおかワイナリー」

続いての目的地は、今年の5月にオープンした「とみおかワイナリー」へ。今年2月に行ったツアーでも、ご案内いただき、今回もたくさんのお話を伺いました。

とみおかワイナリー

まずは、代表の遠藤秀文さんより、とみおかワイナリーについて、現在育てている16,000本のブドウの木が東日本大震災前の富岡町民16,000人の数と同じであることなど、ワイナリーの様々な思いをお話しいただきました。また、遠藤さんから「美術館ができた時には、とても多くの人たちが富岡に来ることでしょう。ワイナリーと、そして美術館と共に富岡町を盛り上げていけたらと思っております」とお話しいただきました。

富岡駅東エリアで大津波に耐えて唯一残った建物「希望の蔵」。蔵の窓の鉄格子が、津波の勢いで、湾曲している。

とみおかワインドメーヌ統括リーダーの細川順一郎さんより、この秋から稼働する醸造施設についてもご紹介いただいた。

ワインが美味しくなるように、醸造タンクにはこれまで遠藤さんが訪れた国の「ありがとう」の単語が書かれている。

たっぷりと、ワイナリーについてご紹介いただいた後には2階のレストラン「ラレス」にて、この日だけのスペシャルランチをいただきました。

アミューズ5種、パスタ、デザートと共に、ワインの飲み比べも。

参加者同士での交流の時間となった。

常磐線の線路と同じ高さにあるレストラン。電車に手を振る場面も。

一人ひとりの“秒数”を刻む──タイム設定ワークショップ

ランチの後は「時の海 - 東北」プロジェクト富岡町オフィスに移り、対話型のタイム設定ワークショップを行いました。宮島達男より、これまでのアーティストとしての活動や作品《Sea of Time - TOHOKU》、ワークショップについて説明。

作品紹介をする宮島達男

説明の後は、いよいよタイム設定です。参加者は、0.2秒から120.0秒の間で思い入れのある秒数を自由に設定することができます。また、秒数に込めた想いやエピソードもワークシートに書いていただきます。

参加者一人ひとり、秒数を決める様子

ワークシートへの記入後、各グループに分かれ、それぞれが決めた秒数とそこに込めた想いやエピソードの共有を行いました。一人ひとりのお話やその想いに、みなさまは耳を傾けていました。
今回も様々な想いを伺うことができました。

モデレーターを中心に、秒数と込めた想いを伺う。

熱心に耳を傾ける場面も。

時には、笑みが溢れる瞬間も。

各グループで共有を行った後は、各グループから代表して1名に、ご自身が決めた秒数とそれに込めた想いについて共有いただきました。エピソードからは、これまでのご経験や記念日、大切な思い出など様々です。

参加者の想いと秒数

今回、タイム設定に参加してくださった方のなかから、秒数に込めた想いをいくつかご紹介します。

0.6秒

心肺蘇生法の時の胸骨圧迫(心臓マッサージ)のリズムが1回0.6秒(100回/分)
命をつなぐリズムなので、時を刻む1つとなれば良いと思います。
(1966年生まれ、女性)

21.5秒

自分が生まれ育った番地、故郷を意味する数字。
震災から10年経った時に初めて被災地を訪れ、色々な思いを巡らせたが、1番は自分の家族とふるさとを大切にしたい想い、東北を訪れる度に大切なことを思い出す。
いつかは故郷でなにかプロジェクトを作ることが一つの夢。
(1997年生まれ、男性)

60.0秒

2011年3月11日東日本大震災の時、私はビルの14階にいました。激しい縦揺れのあと、ぐらりぐらりとビルは大きくひねって揺れて、とても怖い思いをしました。
揺れがおさまった後、余震も度々あり、その中でエレベーターに乗った時、心臓がドキドキして息苦しくなりました。
60秒はエレベーターに乗っていた時間です。長い長い1分間でした。建築設計を仕事にしている中で、地震というものに対して、自分の設計した建物が安全に建ち続ける事の大切さを改めて考えた大切な時間です。
(1981年生まれ、女性)

宮島達男 × 田根剛──未来の美術館を語る

そして、特別プログラム最後の企画の宮島達男と田根剛さんによるトークでは、美術館の建築に関する最新情報や富岡町、浜通りに何度も訪れることで感じたことなどが語られました。

最新の美術館の建築デザインのイメージパースを紹介する田根さん。

©Atelier Tsuyoshi Tane Architects

以前、田根さんから「普請ふしん」という考え方について伺いました。今回のトークでは、その考えを踏まえ、作品を展示する美術館建築を多くの人と力を合わせてつくり上げていきたいと語られました。一気に完成させるのではなく、みんなで少しずつ形にしていく。その過程の中で新しい関わりが生まれていく未来を感じました。

トークをもって締めくくりとなり、特別プログラムは無事に終了しました。

ともに刻む「時の海 - 東北」の未来へ

今回の特別プログラムでは、美術館予定地の見学からワイナリー訪問、そしてタイム設定ワークショップやトークセッションまで、多様な体験を通して「時の海 - 東北」プロジェクト、福島県富岡町の「今」を感じていただけるプログラムとなりました。
そして、宮島達男の作品に込めた想いと美術館予定地との出会い、田根さんの語る美術館の建築に込めた想いと、参加者一人ひとりが込めた秒数への想いが重なり合い、《Sea of Time - TOHOKU》が紡ぎ出す未来の姿が少しずつ輪郭を帯びてきたように思います。

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

SPECIAL THANKS

企画運営

NPO法人 インビジブル

協力

一般社団法人HAMADOORI13とみおかワイナリー撮影スタジオ写真館 コススタ

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