「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」というコンセプトに基づき、東日本大震災をきっかけにアーティストである宮島達男が、震災の犠牲者の鎮魂と震災の記憶の継承、そして、これからの東北の未来を東北に生きる人々、東北に想いを寄せる人々と協働しつくる「時の海 - 東北」プロジェクト。2015年に構想をスタートし、3,000名近くの人々との対話を重ねながら、作品を生み出してきました。
「時の海 - 東北」プロジェクトの紹介映像をYouTubeにて、公開しました。本記事では、映像の見どころ、そして撮影の様子などを富岡町に住むスタッフの視点からご紹介します。
文=西塚笑子(「時の海 - 東北」プロジェクトスタッフ)
映像の見どころをご紹介
「時の海 - 東北」プロジェクトの紹介映像を、現代美術家・映像ディレクターの西野正将さんに制作いただきました。映像には、「時の海 - 東北」プロジェクトのこれまでの歩みや様々な想いが込められています。
約8分のフルバージョンでは、ショートバージョンの内容を含みつつ、より丁寧に語られる宮島の言葉や富岡町の方々との交流の様子、現地の自然や空気感までが映し出されています。実際に美術館建設予定地を訪ねるシーンや冬の富岡の空と、海の表情も印象的です。
また、2月7日に行われたメディア向けバスツアーの様子やスタジオの風景など、制作の舞台裏も記録されています。
今年2月3日に六本木で行われた記者発表で公開したショートバージョンでは、プロジェクトの概要や宮島のプロジェクトの想いがギュッと詰まっています。
スタジオでの撮影の様子
《時の海 - 東北》美術館(仮称)の模型と撮影
宮島の語りのシーンは福島県富岡町のオフィスで撮影しました。
「時の海 - 東北」の輪郭を感じ、その内側に流れる想い――東北、福島県浜通り、そして富岡町とのつながりをじっくりと受け取っていただける内容になっています。
ぜひ、映像を通じてプロジェクトの核心に近づいていただけたら嬉しいです。
美術館建設予定地の新たな表情
この映像が撮影されたのは、冬の寒さが本格的になる2024年12月中旬。
富岡町の美術館建設予定地に立ったその日、空は澄み渡り、海の青さがひときわ深く感じられました。
雲の流れや陽の射す瞬間を何度も見極めながら、自然が導くままに、その場の光や風景に委ねるようにして撮影に臨みました。
プロジェクトの拠点である富岡町オフィスが開所してからもうすぐ1年。通いながら、そして、移住してからも見続けてきた富岡町の海には、毎日のように違う表情があります。
穏やかで静かな日もあれば、風にざわめき立つ日もあり、時折その変化に驚かされることも。
そんな「日々変わりゆく風景」の中で、このプロジェクトが一歩ずつ進んでいることを、実感しています。
この日は穏やかな海で、ゆったりとした時間が流れていました。
撮影のロケーションを探す様子。
《時の海 - 東北》美術館(仮称)建設予定地周辺の自然の姿。
西野さんのディレクションのもと、撮影現場では数々の試行錯誤が行われました。特に建設予定地の周囲をドローンで撮影したシーンは、この土地が持つ広がりや静けさ、そして力強さがありました。地上から何度も見てきた風景が、空から見ることで、まるで新しい場所のように立ち現れたのです。映像を通して「この土地には、まだ見えていない表情があったのだ」と気づかされました。
また、映像内で宮島が
「東北の沿岸地域をここ3年ほど探し回っていたんですけど、ようやく“ちょうどいい距離”の場所が見つかって。それが福島県の富岡という場所なんです。全員が『あ、ここだ』って思ったんですよね。鳥肌が立つぐらい、自分たちが思い描いていたイメージ通りの場所が、まさにそこにあった」
と語っています。
その言葉通り、「ここだ」と思えた直感が、映像を通して確信へと変わっていく――。そんな感覚があり、ドローンが捉えた風景が、改めてこの土地と作品がもつ意味を強く感じさせた瞬間でもありました。
ドローン撮影の様子
映像を通して
映像が完成して改めて感じたのは、「時の海 - 東北」プロジェクトが単なる美術館建設ではなく、人と自然、記憶と未来が交わるプロセスそのものであるということです。
現地で感じた風景の力、これまで共に歩んできた方々の想い、そして福島県富岡町や浜通りとのつながりが、このプロジェクトの土台となっています。
これからもその歩みは続いていきます。ぜひ、映像を通して「時の海 - 東北」が描く「今」と「これから」に触れていただけたら嬉しいです。
映像制作クレジット
Sea of Time - TOHOKU
監修
宮島達男
監督・撮影・編集
西野正将
撮影
玄宇民、冨田了平
英文翻訳
Sam Holden
企画
嘉原妙
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